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ある雪の日の物語

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【ある雪の日の物語】

私は昨夜から降り止まぬ雪の中を歩いていた。

今日は大雪だってニュースで言ってたのにと、後悔する間もなく襲ってくる冷たい雪と風。

指先から伝わる冷気が体を包み込み、全身の感覚がなくなっていくのがわかる。

わずかな感覚を頼りに一歩一歩足を前に運んでいた。

白い息を吐く音と、

深く真っ白な雪を踏む進む音だけが頭に響いてくる。

私は何故こんなところを一人で歩いているのかさえもわからなくなってきた。

あまりの寒さで、思考回路も働かなくなっていたのでしょう。

そんな虚ろな意識の中、ふと見上げた視線の先に、私は「Soil」という看板を見つけた。

青い看板に「Soil」と書いてある。

大きな窓の中に見えるオレンジ色の優しい灯り。

私は夢中で歩き、その扉を開けた。

「いらっしゃい。」と、気さくそうなお兄さんの声。

何か挨拶を返さなければと思いつつも、凍り固まった口元からは声を発することもできず、とにかく席に座った。

温かい店内にはお兄さんの他は誰もいなかったので、コートのまま置いてあるストーブの前まで行き、少しずつ体を溶かしていった。「生き返るとはこのことだなあ。」なんて思った。

少しずつ意識がはっきりとしてきて、指先の感覚も戻ってきたが体の芯まではまだ時間がかかりそう。

でも、とにかく何か注文しなければ、と「あのっ…。」と言おうとしたところに、

「お待たせいたしました。」

私の目の前に置かれたのは、一杯のミルクティーだった。

「えっ….。」私はお兄さんの方を見たが、

「ごゆっくり。」とだけ。

私は手の感覚を確かめながら、ゆっくりとカップを口元に運び、一口飲んでみた。

ミルクに包まれたアッサムの芳醇な香りが私の体内に流れていくのを感じた。

「おいしい。」

これまでに味わったことのない優しい味だった。

ふと、お兄さんのほうを見ると、とぼけた顔でお皿を拭いていた。

あの時、ストーブでも溶かしきれなかった私の体を溶かしてくれた「ミルクティー」と「お兄さん」。

あの時のミルクティーの味とお兄さんの笑顔と黄色いカップを、私は生涯忘れることはないでしょう。

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この物語にでてくるカップってどんなカップなんだろうね。

見に来てください。