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〜アバンギャルド係長〜

(会社ではアバンギャルド一匹狼係長として一目置かれているはずの俺をこんな薄汚れたバーに呼び出しやがって、あいつら一体なんだってんだ。 仕事で怒られた仕返しを皆でしようってのか! けっ!そうはいくかってんだよ。この研ぎすまされた直感力と学生時代に通信空手で鍛えた俺を欺こうなんて百年早いよ。って、なんだなんだ、いきなり乾杯を始めやがって! この俺のビールに毒でも盛りやがったか、この野郎!まあまあ、さすがにそこまではしないか! はっ!さては、俺の唯一の弱点である音痴という極秘情報を誰かが入手しやがったな! くっそ〜、探偵まで雇いやがったか! で、俺を酔わせて歌わせて、皆で笑おうって魂胆だな! バット、甘い甘いっ、俺のカタブツ係長キャラで、頑固に絶対に歌わねえよって断るだけさ! ほらほら案の定やっぱりカラオケを歌い出したな! そうは問屋が卸さねえっての! それにしても何だこのテンポの速い歌は! 何言ってるわかんねえよ! ってか誰だよ、今歌ってる若造は! 新人だな! そんな細い眉毛で営業が出来るかっての! 明日からしごいてやる! って、何だよこれは一体、なんの嫌がらせだよ、この居心地の悪い集まりはよ〜! おっ、次は新人の吉村くんが歌うんだな。 ほう〜、なかなかかわいいじゃないか。 俺が一緒に三年目の浮気でも歌ってやろうか!なんつってね! って、何でカラオケでハーピーバースデーの歌を歌い出したんだ!? そうか、誰かの誕生日なんだな! けっ、そんな集まりに俺を呼びやがって! 柄じゃねえっつうの! ったく。 「♫ハッピバースデー ディーア 係長〜♫」 あれっ!えっ! なになに!? 俺? 誕生日、、、あっ、昨日だったけど、、、。 うそっ、マジか? ケーキが出てきた〜!! しかも絵に描いたようなイチゴケーキ〜、って、板チョコに俺の似顔絵まで付いてるじゃないか! 「係長、49歳のお誕生日おめでとうございます。ロウソクの炎を吹き消してください。」って言われても、胸が詰まって、息が詰まって、うまく吹けねえよ! って、うそ〜! 涙が出てきやがった〜! やべえ、ちょっと泣きながら半笑い顔になってるかも。 いかんいかん。 げっ、涙でロウソクの炎がひとつ消えちまったよ! 恥ずかし〜! なに涙でバースデイケーキ濡らしてんだよ、俺は! 「ふ〜〜」 よし、息で消せた。 何だこれ! 何でみんな俺のほう見て微笑んでんだよ! 何で拍手してんだよ! 嬉しいじゃねえかよ! 新人の細眉毛も「おめでとうございまーす!」なんて言ってくれてるじゃねえか! 世渡り上手なだけの年下課長野郎も微笑みながら拍手してるよ。 なんだよこれ! 嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいじゃねえかよ。 えっ、コメントをお願いしますって!? 何言ったらいいかわかんねえよ! 「んんっ(咳払い)、え〜っと、まあ、明日の仕事に影響が出ないように! あまり遅くまでバカ騒ぎしないように! 以上。」)

その後、そそくさと家路についた係長は、甘いものが苦手だからといって、家までもって帰ったケーキをひとりでニコニコ食べたとさ。

〜END〜

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そんな49歳を迎えた係長がイチゴのケーキを食べたケーキプレートって一体どんなプレートだったんだろう?

 

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